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私の視点

星新一作品を超えるか? コンピュ−タで小説創作へ

 人工知能を搭載したコンピュ−タで、本格的な小説づくりの研究を始めたというニュ−スが、9月7日の読売新聞の科学ニュ−ス欄に記載されていました。興味をもって読み続けると、公立はこだて未来大(北海道函館市)の松原仁教授と作家の瀬名秀明さんが、人工知能による作品と分からないように、ペンネームで出版社の文芸コンテストに応募して入選を目指す考えであるということです。

人工知能(Artificial Intelligence; AI)といえば、以前にエキスパートシステムと言って、使用領域を限定すれば、ルールベースの推論でコンピュータが答えを導き出すシステムが一部成功を収めたこともあって、AI がブームになった頃がありました。私もそれを応用して歯科医療システム研究会で研究発表をしたことを思いだしました。

第五世代コンピュ−タ・ブロジェクトもこの頃に発足したのですが、しかし残念ながら、エキスパートシステムより進んだ形での、実用的な応用システムはなかなか作られませんでした。より人間のレベルに近い自然言語処理能力・推論能力をコンピュータに持たせるのは難しかったのです。そして AI 研究のブームは去って行きました。

松原教授らは、「ショートショート」(掌編小説)の草分けだった星新一さん(1926〜97)の「ボッコちゃん」など1000編以上の作品に着目。これらをコンピューターに分析させて、起承転結が明確で分かりやすい構成の文体である星さんの作品を、5年以内に同等以上の内容をもつ小説を創作させる研究を始めたということです。

その内容は、作品中の単語や文章の長さなどをコンピューターに分析させて、星さんの独創性を見いだし、それをもとに400字詰め原稿用紙20枚以内のオリジナル作品を創作させるということです。瀬名さんは顧問として研究チームに助言するそうです。

現在、人工知能はチェスやクイズで人間の王者を打ち破るほど発展してきました。しかし、芸術や小説などの感性を扱うのは苦手ということですが、完成することを楽しみにしております。星文学一愛読者(TN)



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