会員コラム
私の視点

暑 気 払 い。
 江戸の川柳に『枇杷と桃、葉ばかりながら暑気払い。』というのが残っています。
これは「本来は実を食べるはずの枇杷と桃の葉っぱばっかりですいませんが、ひとつ暑気払いでも…」という句のようです。枇杷や桃の葉には体を冷やす効果の有ることが知られていたようです。その後は、単に夏場の暑さやストレスを発散する名目としての宴会や、飲み会を指すことも多く、清涼飲料や冷菓などが人気を博していたようです。

その際に参加したのは常連の悪友共でしたが、今回は誘いを喜んで遙々駆けつけてくれた懐友がおりました。飲みながらの談笑には誰ともなく、話題の中に人の名前などが出て記憶の「度忘れ」に戸惑いました。「度忘れ」とは何なのか?、「物忘れ」とはどのように違うのか?、ボケとでも言うのか?、話は弾んで遅くまで語り合いました。

物の本によると、昔から知っている事が時々思い出せなくなったりすることを単に「度忘れ」というが、この「度忘れ」の回数が増えて行くと、年齢増に伴う「物忘れ」と言う事になる。結局、「度忘れ」とは知っている事をたまに忘れる事である。覚えている筈の事を覚えていないようでは、もう「度忘れ」ではなく「物忘れ」になってしまう。

「物忘れ」が急にひどくなり、何回も同じ事を忘れるようであれば、脳の病気を疑った方が良いかも知れない。最近では、年を取って行くにつれて「新しい事が覚えられない」と言う人が多くなっているようです。だからといって最近の流行歌や流行語などは、そのこと自体に興味が少なければ、覚えられなくても別に気にする事はない。ただ問題視すべきは食事の時の献立の内容ではなく、食べたこと自体を覚えていない事象である。

先日(2009年10月28日)に放送されたNHKの「ためしてガッテン」では、脳の仕組みについて解説されました。それによると加齢によって起こる「物忘れ(健忘症?)」は、アルツハイマ−病や認知症などの病的な「物忘れ」とは原因が異なるが、脳内の前部帯状回(Anterior Cingulate Cortex)という部位の衰えが関わっているそうです。
このACCという箇所をインタ−ネットで調べて見ますと、脳内の情報(記憶)を「仕分け」する能力と、それを見つけ出すために「索引」する能力とが揃えてあるということでした。入ってきた情報を後で見つけやすいような場所に収納するが、「仕分け」と「索引」の2つの事を同時にやろうとすると、前に行っていた事例を忘れてしまいがちなので、それを忘れないようにするための機能も備わっているようです。
またACCは、脳前方の内側にある部分で、大事な情報を選択して思い出しやすいようにしておく機能もあって、それが衰えても、映像をイメ−ジしながら物事を覚えるように工夫すると、ACCを活性化することが出来るようです。しかも、よりリアルにイメ−ジすることによってACCの能力がより高まるので、何をするにしても、五感などを含めてリアルにイメ−ジすることが大事だそうです。そのことは骨格筋がトレ−ニンク゜によって、何歳になっても増強・維持ができるようですが、このことと同じかも知れません。
人間の肉体が衰えて行く事は自然の成り行きですか、しかし脳の老いは誰しもが危惧する問題だと思います。そのため、普段から何でも「イメージ」するくせをつけておくと、老いが穏やかになるかも知れません。一度試してみる価値はあるようですね。(TN) 平成24年8月20日


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