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私の視点

家族に感謝 「iPS細胞」

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は10月8日、2012年のノーベル生理学・医学賞を、生物のあらゆる細胞に成長できて再生医療の実現につながるiPS細胞を初めて作製した山中伸弥京都大学教授(50)と、ジョン・ガードン英ケンブリッジ大名誉教授(79)の2人に贈ると発表しました。非常にお目出度い話です。(10月8日毎日新聞)

現在、治せない病気や怪我から解放されるためには、臓器や細胞を移植することが必要であり、移植すべき臓器や細胞を、何らかの方法で作り出そうと考えられたのが再生医療だそうです。

その再生医療の切り札が、ES細胞研究です。例えば、不妊治療(人工授精)のために取り出してある受精卵(胚)を利用しようという考え方です。ES細胞は、臓器、細胞の再生に不可欠な「万能性」が備わっていることから、「万能細胞」とも呼ばれています。 

しかしながら、ES細胞には、大きな二つの障害があります。一つは、他人の受精卵を使うことで起きる「拒絶反応」を制御し切れないという技術的な問題と、いま一つは、「万物の創造主」たる神の領域に踏み込みはしないかという倫理的な問題だそうてす。
そこで注目されたのが、山中教授が取り組んでいるiPS細胞(人工多能性幹細胞)が浮上します。iPS細胞は、受精卵ではなく、皮膚細胞などから作り出し、ES細胞と同じ「万能性」をもった細胞を意味します。患者本人の皮膚細胞から作り出せば、拒絶反応の問題をクリアできます。受精卵を使わないので倫理面でも障害がありません。世界中がiPS細胞に期待を寄せる理由がここにあるのです。

iPS細胞研究の最大のポイントは、皮膚という分化後の進んだ状態の細胞から、分化する前の根源状態ともいえる万能細胞に、リセットしてしまおうという点にあります。つまり、「初期化」です。

山中教授は、この初期化のために、万能細胞への誘導の役割を果たす遺伝子を、皮膚細胞に注入しようと考えたそうです。そして、さまざまな試行を経て、4つの遺伝子見つけ出し、触媒的な役割を果たすレトロウィルスに乗せて加えることで、iPS細胞を作り出すことに成功したのです。凄いですね。今後、益々ご多用になられることでしょうが、お体だけはお大事にして、国家の為にも、難病に悩む世界中の方々の幸福の為にも、存分にご活躍下さるよう願っております。(TN)

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